APIテスト自動化

APIテストの自動化によって、チームは実装内容を継続的に検証し、本番環境に到達する前に問題を検出できるようになります。

テクノロジーをテストするPostmanaut。イラスト。

APIテスト自動化とは

APIテスト自動化とは、特定の時間や頻度、またはCI/CDパイプライン内で、テストツールを使用してAPIテストをスクリプトで自動実行するプロセスです。これは特にアジャイル開発チームにとって重要であり、高速な開発サイクルを維持しながら、APIが期待どおりに動作していることを継続的かつ体系的に検証することを可能にします。自動化によって、本番環境に破壊的な変更が到達するのを未然に防ぐことができ、手動アプローチを置き換えるのではなく、それを補完する役割を果たします。APIテストを自動化しているチームは、開発者のリソースを節約しながら、新機能を迅速かつ自信を持ってリリースできます。

ここでは、APIテスト自動化が現代のソフトウェア開発において果たす役割と、チームが「シフトレフト」(開発ライフサイクルの初期段階でのテスト実施)を実現する方法について解説します。さらに、自動化による主な利点とベストプラクティスを紹介し、Postman APIプラットフォームAPIライフサイクル全体にわたってテストをどのように自動化できるかを見ていきます。

APIファーストの世界でAPIテスト自動化の役割とは

APIテストは、APIファースト開発モデルにおける重要な要素です。これにより、チームはAPIが期待通りに動作していることを確認し、品質を検証できます。しかし、品質の確保だけでは十分とは言えません。競争力を維持するには、新機能を迅速にリリースし続ける必要があります。多くのチームが採用しているアジャイル開発手法では、1日または1週間に複数回、小さなコード変更を反映する運用が一般的です。こうした高速な開発サイクルを支える一方で、破壊的な変更が混入するリスクも高まります。

この課題への解決策として、APIテスト自動化が注目されています。テスト自動化により、APIの品質やテストカバレッジを犠牲にすることなく、チームはアジャイルな開発体制を維持できます。自動化されたAPIテストは、スケジュールに沿って実行することも、開発者がコードをプッシュするたびにCI/CDパイプライン内で実行することも可能です。こうしたハンズフリーな仕組みは、どのチームの既存のワークフローにもシームレスに統合でき、テストの見落としによる問題の発生を未然に防ぐのに役立ちます。


APIテスト自動化はチームが「シフトレフト」するのをどのように支援するか?

従来、ソフトウェアテストは長期の開発サイクルの最後に、専任のQAチームによって実施されてきました。しかしこのアプローチは、時間がかかるうえ、人為的なミスが発生しやすく、予期しない問題への対応が遅れることで、最終段階での修正によりリリースが遅延する可能性があります。

「シフトレフトテスト」は、開発の早い段階でテストをより頻繁に実行することによって、このようなボトルネックを取り除く考え方です。なかでも自動化はシフトレフトを実現するうえで重要な役割を果たします。開発者が新しいコードをプッシュするたびに、CI/CDパイプライン内で自動的にテストを実行できるからです。これにより、APIの構築を担うチームを含む開発チーム全体が、自分たちの作業を継続的に検証し、本番環境に到達する前に問題を検出できるようになります。テストの自動化を取り入れているチームは、開発者のリソースを有効に活用しながら、迅速かつ自信を持って機能をリリースできます。


APIテスト自動化の主な利点とは

手動によるAPIテストと同様に、APIテスト自動化によっても、チームはAPIが期待どおりに動作していることを確認できます。さらに、自動化によって開発者のワークフローが効率化され、迅速な反復開発を支援するさまざまなメリットが得られます。APIテストを自動化することで、チームは次のようなことを実現できます。

問題を導入直後に検出する

テストの自動化によって、開発者は作業中に問題をすばやく検出できるようになります。たとえば、チームはCI/CDパイプラインを設定し、コードをプッシュするたびにAPIテストを自動で実行することで、コードが完成する前の段階で即時にフィードバックを得ることができます。テストで問題が検出されれば、開発者はそれをすぐに修正し、本番環境へのデプロイによってユーザーに影響が及ぶのを未然に防ぐことができます。

時間とリソースを節約する

開発サイクルの最終段階でテストを行うアプローチは、QAチームに大きな負担をかけます。限られたスケジュールの中で、すべての機能を確認する責任を負うことが多いためです。この方法では多くの時間と労力が必要となり、さらに、開発チームが予期しない問題の修正に追われた結果、リリースが遅れる可能性もあります。APIテストを自動化すれば、テスト負荷をAPIライフサイクル全体に分散できるため、フィードバックループが短縮され、作業の効率も向上します。その結果、チームは新機能をより迅速かつスムーズに市場へ投入することが可能になります。


APIテスト自動化のベストプラクティスとは

以下のベストプラクティスは、API開発チームが効果的で信頼性の高いテスト自動化戦略を構築・運用するための指針です。各チームのニーズに応じた柔軟な適用が可能であり、安定した品質保証体制の確立に貢献します。

不安定なテスト(Flaky Test)は自動化しない

前述のとおり、APIテスト自動化の大きな利点は、時間の節約と生産性の向上です。ただし、どのテストを自動化するかを慎重に選定することが重要です。たとえば、複雑なロジックを含むテストは偽陽性が発生しやすく、実際には存在しない問題の調査にチームの時間が費やされてしまうことがあります。このような偽陽性が繰り返されると、テスト疲労を引き起こし、本来検出すべき障害を見逃すリスクも高まります。そのため、自動化するテストは単純で再現性の高いものに限定し、障害を確実に検出するために再試行ロジックを実装することが推奨されます。

人的ミスのリスクを軽減する

手動テストは、開発チームにとって重要な作業のひとつですが、どうしても人的ミスが発生しやすい傾向があります。たとえば、開発者がテストを誤って実行したり、結果を正しく解釈できなかったりすることがあります。APIテスト自動化を導入すれば、テストの実行を標準化できるため、人的ミスのリスクを大幅に軽減できます。あわせて、開発チームの信頼感や作業の安心感も向上します。

テストを並行して実行する

自動化されたAPIテストは、特にCI/CDパイプライン内で実行される場合、迅速かつ効率的であることが求められます。もしテストスイートの実行に1時間かかると、開発者は作業を中断するか、フィードバックなしで進めるかの選択を迫られることになります。テストスイートの実行時間を短縮するには、テストを順番にではなく並行して実行するのが効果的です。この方法を用いれば、異なるブラウザ、デバイス、オペレーティングシステムでテストを実行する場合でも、ボトルネックを発生させずに処理を進めることができます。

ワークフロー全体と連携できるテストツールを選ぶ

APIテスト自動化の利点を最大限に引き出すには、既存のワークフローと互換性のあるテストツールを選ぶことが重要です。たとえば、選択したCI/CDパイプラインとシームレスに統合でき、テストが失敗した際にメールやSlackなどを通じて通知を受け取れる機能があると望ましいでしょう。さらに、Datadog、New Relic、Opsgenieといった監視・インシデント対応ツールにテストデータを転送できる柔軟なテストソリューションを求めるチームもあります。


APIテスト自動化で直面しがちな課題とは

チームがAPIテスト自動化戦略を構築・最適化していく過程では、さまざまな課題に直面することがあります。ここでは、代表的な課題をいくつか紹介します。

  • 速度:APIテスト自動化は、迅速な反復を支えるための重要な手段ですが、テストの実行が遅ければその目的が損なわれてしまいます。複雑なテストデータや遅い依存関係、順次実行、セットアップやティアダウンの処理が長い場合などは、実行時間に大きく影響します。こうした要因を踏まえ、チームは自動化戦略を設計する際に、速度とのトレードオフを慎重に見極める必要があります。
  • メンテナンス:APIは頻繁に変更されるため、それに対応してテストスクリプトを更新する作業は時間がかかり、ミスも発生しやすくなります。テストスクリプトを常に最新の状態に保つには、バージョン管理を徹底し、丁寧に運用していくことが重要です。
  • スケーラビリティ:効果的なAPIテスト自動化戦略を実現するには、さまざまな負荷条件や高負荷状態にも対応できる、スケーラブルなテストインフラの整備が不可欠です。チームはテスト環境の構築やリソースの割り当てを行う際に、この点を十分に考慮する必要があります。

APIテスト自動化にPostmanを選ぶ理由とは

Postman APIプラットフォームは、チームがAPIテストスイートを効率的かつ信頼性高く自動化できるよう、多様な自動化ツールを提供しています。Postmanを活用することで、以下のようなことが可能になります。

  • テストスイートを作成し自動化する:Postmanのコードスニペットライブラリを使えば、コレクション内のすべてのリクエストに対してテストを作成でき、それらを組み合わせて複雑なワークフローを検証するテストスイートを構築できます。テストは手動で実行することも、特定の時間や頻度でPostmanのクラウドインフラ上で自動的に実行するようスケジュールすることも可能です。また、テストが失敗した際に、チームがメールで通知を受け取るように設定することもできます。
  • CI/CDパイプラインでAPIテストを実行する:チームは、NewmanPostman CLIを使用して、CI/CDパイプライン内でAPIテストの実行を自動化できます。これにより、本番環境に対する破壊的な変更を防ぎ、後方互換性を確保できます。テスト結果はCIツール上で確認できるほか、Postman内でも可視化されます。
  • 自動テストの失敗をデバッグする:Postmanプラットフォーム上では、自動実行されたテストの結果を確認できます。テスト実行結果は成功・失敗などでフィルタリングでき、各実行にはアサーション失敗の原因を把握するためのコンソールログも含まれています。問題のあるリクエストは、同じ環境ファイルを用いてローカルで再実行することができ、障害の再現、ヘッダーやボディの検査、原因の特定につなげることが可能です。
  • 自動化されたテスト結果を視覚化する:コレクションベースのモニタースケジュール実行の結果は、フィルタリング可能なダッシュボード上に視覚的に表示されます。これにより、チームは全体的なテストの傾向を把握できるだけでなく、特定のリクエストや実行タイプ、結果に絞り込んで分析することも可能になります。
  • 専用のテスト環境を作成する:Postmanでは、環境レベルで値を変数として保存し、リクエストのURL、ヘッダー、ボディで再利用できます。これにより、コードを本番環境にデプロイする前に、専用のテスト環境で自動化されたAPIテストを実行して、安全性や動作を事前に検証できます。
  • テストスイートを共同で構築しメンテナンスする:Postmanのコラボレーション機能(コメント機能バージョン管理など)を活用すれば、チームは単一のプラットフォーム上で連携しながら、効果的で十分にドキュメント化され、常に最新のAPIテストを共同で作成できます。また、テスト結果を簡単に共有できるほか、失敗の原因をチームで協力して特定・解決することも可能です。

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APIアイコンのまわりで踊るPostmanautたち。イラスト。
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