API設計とは?
API設計とは、APIがどのようにデータや機能を利用者に公開するかを、意図を持って設計するプロセスです。成功するAPI設計では、エンドポイント、メソッド、リソースを標準化された仕様フォーマットで明確に定義します。
APIの設計プロセスは、利用者と提供者の双方にとって有益です。ビジネス目標に合致しつつ、使いやすく、柔軟で、テストしやすく、ドキュメントが整備されたAPIを実現できます。API設計は、APIライフサイクルの初期段階で行うことが重要で、関係者の認識をすり合わせると同時に、将来的な問題を早期に発見・回避する助けになります。また、API設計は有効なAPIガバナンス戦略の一環でもあり、組織全体で再利用可能な標準的APIパターンを整備することにもつながります。
ここでは、API設計とAPIファースト開発モデルの関係、API設計の主要ステージ、API設計におけるモックの役割、そしてPostman APIプラットフォームを活用して成熟した設計プロセスを導入する方法について解説します。
API設計はAPIファースト開発モデルをどのようにサポートしますか?
APIファーストとは、アプリケーションの構想および構築を、APIを通じて提供されるサービスを前提として進める開発モデルです。コードファーストのアプローチでは、APIは後から付け足されることが多いのに対し、APIファーストでは、アプリケーションの開発よりも先にAPIが設計されます。この戦略により、APIの実装前に提供者と利用者がAPI定義について協働できるため、APIの品質と使いやすさの両方が向上します。
API設計にはどのようなアプローチがあるのでしょうか?
API設計には、一般的に次のような代表的アプローチがあります。
インサイドアウトAPI設計
インサイドアウト型アプローチでは、API提供者の既存バックエンドシステムを出発点として設計が行われます。内部の実装詳細や機能をAPIを通じて公開するため、きめ細かな制御や内部プロセスへの直接的なアクセス、豊富な機能 性を実現できます。ただし、その一方でAPIがシステムと強く結合し、利用者にとって複雑になりやすいという欠点もあります。
アウトサイドインAPI設計
アウトサイドイン型のアプローチでは、外部の利用者のニーズや要件を起点としてAPIが設計され、内部の複雑さは利用者に意識させないようにします。この手法では、シンプルさ、使いやすさ、柔軟性が重視され、利用者は内部の実装を知らなくてもAPIを活用できます。このアプローチによって、結合度の低いAPIが実現し、保守や将来的な拡張も容易になります。
アジャイルAPI設計
アジャイルAPI設計では、仕様が完全に固まる前からAPIの開発に着手します。柔軟性、関係者間の協働、変化への迅速な対応を重視しながら、反復的にAPIを改善していきます。開発者、関係者、エンドユーザーの密な連携により、ニーズに合致したAPIを迅速に提供することが可能になります。
API設計の4つの重要ステップ
API設計プロセスには、すべての組織が押さえておくべき4つの主要 ステップがあります。各ステップでは、ビジネスリーダー、開発者、利用者、パートナーといった関係者が協力し、APIがあらゆるニーズに対応できるようにすることが求められます。API設計のあらゆる段階で協業することで、不要な機能の実装を避けることにもつながります。
ステップ1:APIの目的を明確にする
最初のステップは、すべての関係者がAPIのビジネスユースケースに合意することです。たとえば、認証ワークフローを担うAPIと、商品カタログを閲覧するAPIとでは、必要な要件が大きく異なります。そのため、他の意思決定を行う前に、ユースケースを明確に定義することが重要です。ユースケースによっては、選択すべきアーキテクチャにも影響を与えます。たとえば、社内のマイクロサービス間をつなぐAPIであればgRPCベースのアーキテクチャが適しているかもしれませんし、異なるデータソースに依存するサービスであればGraphQL APIが有効です。合意が取れたら、APIが特定のニーズをどのように満たすのかを自然な言葉で明確に記述し、関係者全員の目標を共有しましょう。
ステップ2:仕様でAPIコントラクトを定義する
APIのユースケースに関する合意が取れたら、次は必要なリソースの選定、データの構造とフォーマットの設計、リソース同士の関係性の定義、そしてそれぞれのエンドポイントで使用できるメソッドの決定を行います。また、APIにどの程度の抽象化やカプセル化を持たせるかも検討する必要があります。これにより、再利用性と可読性のバランスを取ることができます。
これらの設計上の決定は、API定義としてまとめます。API定義とは、人間にも機械にも読み取れる形式で、APIの意図する機能を記述したものです。API定義は、OpenAPIやAsyncAPIなどの仕様に準拠しており、APIコントラクト、ドキュメント、モック、テストの基盤となります。
ステップ3:モックとテストで仮定を検証する
API定義が完成したら、それを基にモックサーバーを作成できます。モックサーバーはリクエストに対してサンプルデータを返すため、APIが設計どおりに動作するかを検証することができます。モックはAPIテストと組み合わせて使用することもでき、テストは手動実行、スケジュール実行、またはCI/CDパイプライン内での自動実行が可能です。API設計段階でのモックとテストにより、問題を早期に発見・修正できるため、利用者のコードベースに影響が及ぶ前に対処することができます。
モックサーバーの詳細については、この後のセクションで解説します。
ステップ4:APIを文書化する
API設計プロセスの最終ステップは、APIのドキュメントを作成することです。すべてのリソース、メソッド、パラメータ、パスに関する重要な詳細を定義することで、設計内容の確認が可能になり、利用者がスムーズにAPIを使用開始できるようになります。また、APIリクエストやレスポンスの具体例を記載することで、APIがどのようにビジネスニーズをサポートするのか、利用者にとって理解しやすくなります。なお、API定義からドキュメントを自動生成できるツールも存在するため、ドキュメントの陳腐化を防ぐことも可能です。
API設計におけるモックの役割とは?
モックとは、APIリクエストに対してサンプルデータを返すモックサーバーを設定する手法であり、API設計プロセスにおいて重要な役割を果たします。API定義が完成すればすぐにモックを導入できるため、テストと組み合わせて設計上の判断を検証し、APIが期待どおりに動作するかを確認することが可能です。モックは、APIの利 用者がまだ開発中のAPIを使って統合作業を開始できるようにする一方で、提供者にとっては不完全またはバグのある実装を急いで公開する必要がなくなるという利点があります。このメリットにより、社内APIの提供者と利用者が同時並行で作業を進められるようになり、市場投入までの時間を大幅に短縮できます。
一般的なAPI設計パターンにはどのようなものがありますか?
API設計パターンとは、APIの設計時に直面する共通の課題に対する、標準化された解決策を指します。効果的なAPI設計パターンは、再利用性と保守性に優れたAPIを設計するための体系的なアプローチを提供します。代表的なAPI設計パターンには、次のようなものがあります。
- リクエスト ー レスポンス:最も基本的かつ広く使用されているAPI設計パターンです。クライアントがサーバーにリクエストを送り、サーバーがそのリクエストを処理してレスポンスを返します。このパターンは同期的に動作し、リソースに対するCRUD操作(作成・読み取り・更新・削除)に適しています。
- ページネーション:大規模なデータセットを、扱いやすい小さな単位(チャンク)に分割して処理するためのパターンです。一般的な方法としては、
?limit=10&offset=20
のようなlimit-offset方式や、カーソルを用いて次の結果セットを取得するカーソルベース方式があります。データを段階的に読み込むことで、パフォーマンスの向上につながります。 - レート制限:一定時間内にクライアントが送信できるリクエスト数を制御し、APIの濫用を防ぐパターンです。トークン方式、クォータ方式、スライディングウィンドウ方式などの実装方法があり、HTTPステータスコードやヘッダーを使用して、クライアントに現在のレート制限の状況を通知します。
- API認証と認可:このパターンは、認証されたうえで認可されたユーザーだけが特定のAPIエンドポイントにアクセスできるようにするものです。代表的な方法には、APIキー、OAuth 2.0、JSON Web Token(JWT)があります。このパターンでは、認証情報の安全な送信、トークンの管理、アクセス制御の定義により、機密データや機能を保護します。
- Webhook:Webhookパターンでは、特定のイベントが発生した際に、APIがクライアントの指定したURLにHTTPリクエストを送信することで、リアルタイムの更新をクライアントにプッシュ通知します。従来のリクエスト—レスポンス型の通信とは異なり、Webhookは非同期に動作し、通知やイベント駆動型のワークフロー、外部システムとの連携に活用されます。クライアントはAPI提供者に自身のURLを登録し、提供者はイベントデータを含むPOSTリクエストをそのURLに送信します。
API設計のベストプラクティスにはどのようなものがありますか?
APIはそれぞれ異なるため、設計にも固有のアプローチが必要になります。しかし、APIのアーキテクチャや使用言語、ユースケースにかかわらず、常に意識すべきベストプラクティスがいくつか存在します。たとえば、以下の点が重要です。
- 一貫性を重視する:一貫性は、成功するAPI設計において欠かせない要素です。そのため、組織全体で標準を徹底するためのAPIガバナンス戦略を構築することが重要です。たとえば、組織内のすべてのAPIで、メソッド名、エンドポイント、リソース名などに統一された命名規則を適用すべきです。
- 関係者全員の意見を取り入れる:API設計上の問題の多くは、関係者間のコミュニケーション不足から発生します。各ステークホルダーは、それぞれ異なる専門知識を持っており、それがAPIの設計や実装に影響を与える可能性があります。したがって、設計プロセスのあらゆる段階で関係者を巻き込み、意見を反映させることが重要です。
- APIの背景や制約を正しく把握する:設計を始める前に、そのAPIを取り巻く背景や制約条件を明確に理解しておく必要があります。たとえば、他のプロジェクトとのスケジュールの競合、基盤システムの制限、想定されるトラフィック量などを事前に把握しておくことで、現実的かつ効果的な設計判断が可能になります。
API設計に関するその他の一般的な質問
APIファースト設計とは何ですか?
APIファースト設計とは、APIのインターフェース仕様(コントラクト)の品質を最優先に考える設計アプローチです。このアプローチにより、再利用性が高く、安全で効率的、直感的であり、組織の目標とも整合したAPIが実現されます。
優れた設計のAPIとは何ですか?
優れたAPIは、理解しやすく、使いやすく、保守しやすい設計になっている必要があります。また、スタイルガイドに一貫性を持たせ、認証やデータの暗号化といったセキュリティ機能を組み込み、大量のトラフィックにも安定して対応できるようにすることが求められます。
APIをどのように設計できますか?
APIを設計するには、まずAPIの目的やユースケースを明確に把握することが重要です。そのうえで、仕様に基づいたAPIコントラクトを定義し、モックやテストを使って設計上の仮定を検証し、すべてのリソース、メソッド、パラメータ、パスを明確に文書化します。また、設計プロセス全体を通じて関係者と密に連携することも重要です。
APIの設計にはどれくらい時間がかかりますか?
API設計は反復的なプロセスであり、ユースケースや要件によって所要期間は異なります。数週間で完了することもあれば、数ヶ月かかる場合もあります。
RESTful API設計とは何ですか?
RESTful API設計とは、現在最も広く使われているAPIアーキテクチャである「REST(Representational State Transfer)」の原則に従ってAPIを設計することを指します。RESTfulなアーキテクチャでは、リソースはURI(Uniform Resource Identifier)によって識別され、クライアントはGET、POST、PUT、DELETEなどの標準的なHTTPメソッドを使ってリソースを操作します。
なぜPostmanがAPI設計に最適なのか
ソフトウェアのレビューサイトG2において「API設計に最も優れたツール」として評価されたPostman APIプラットフォームは、成熟したAPI設計プロセスを導入するための強力な機能を多数備えています。Postmanを使えば、次のようなことが可能になります。
- API定義を生成し編集する:Postmanでは、既存のAPI定義をインポートすることも、ゼロから新たに定義を作成することもできます。OpenAPI、RAML、Protobuf、GraphQL、WSDLといった仕様に対応しており、自社のニーズに最適なフォーマットを柔軟に選択できます。
- APIドキュメントを自動生成する:Postmanは、任意のコレクションやOpenAPI 3.0の定義に基づき、ドキュメントを自動生成します。定義に変更が加えられるとドキュメントも自動的に更新されるため、常に最新の情報を利用者に提供できます。
- APIコントラクトテストを構築・実行・自動化する:Postmanには、カスタマイズ可能なコードスニペットが多数用意されており、それらを活用してAPIコントラクトテストを簡単に構築できます。テストはPostman上で手動実行できるほか、NewmanやPostman CLI を使用してCI/CDパイプライン内で自動実行することも可能です。
- モックサーバーによるAPI動作をシミュレーションする:Postmanでは、APIが本番環境にまだ展開されていない段階でも、リクエストに対してサンプルデータを返すモックサーバーをセットアップできます。これにより、提供者は開発を急がずに仮定を検証でき、利用者は統合作業を早期に開始できます。
- 組織全体でコラボレーションする:Postmanは、チームワークスペースを活用して組織内でのスムーズな共同作業を実現します。プラットフォーム全体にコメント機能が統合されているため、APIに関するやり取りを同じ場所で行える点も大きな特長です。また、直感的で使いやすいUI設計により、開発者だけでなくビジネス関係者も扱いやすいのが魅力です。