APIドキュメント

本の中から出てくるPostmanaut。イラスト。

APIドキュメントとは何ですか?

APIドキュメントとは、APIの使い方や統合方法を、誰でも分かるようにまとめたドキュメントです。

このドキュメントには、利用可能なエンドポイント、メソッド、リソース、認証プロトコル、パラメーター、ヘッダーといった詳細情報のほか、よく使用されるリクエストとレスポンスの例などが記載されています。優れたAPIドキュメントは、プライベートAPI、パートナーAPI、パブリックAPIのいずれにおいても開発者体験を向上させるとともに、それぞれの用途に応じたメリットをもたらします。たとえば、プライベートAPIをドキュメント化することでチーム間の連携がスムーズになり、パブリックAPIをドキュメント化することでは企業の意思決定者が外部APIの活用価値や導入の妥当性を判断しやすくなります。実際、APIドキュメントにしっかりと取り組んでいるチームは、APIの採用率が高まり、サポート対応の負荷も軽減される傾向があります。パブリックAPIにおいては、収益増加にもつながるケースがあります。

ここではまず、APIファーストが注目される現在において、APIドキュメントが果たす重要な役割について解説します。 次に、APIドキュメントを構成する主要な要素や、ドキュメント作成時に押さえておくべきベストプラクティスをご紹介します。そして最後に、Postman APIプラットフォームを活用することで、API提供者が利用者の成功を支援する、優れたドキュメントをいかに作成できるかについてご紹介します。

なぜAPIファーストの世界でAPIドキュメンテーションが重要なのですか?

APIファーストとは、アプリケーションを構想・構築する際に、内部または外部のサービスをAPIを通じて組み合わせることを前提とした開発モデルです。このアプローチにより、複雑に構成されたマイクロサービスのネットワークによって駆動される高性能なアプリケーションを構築できるようになるだけでなく、APIを第三者の利用者に対して課金可能な製品として提供する「API as a Product」戦略とも連携しやすくなります。こうした背景から、多くの組織がAPIファースト戦略を採用し、ビジネス目標の達成に向けて高品質なAPIを体系的に開発しようとしています。

APIドキュメントは、プライベートAPIであってもパブリックAPIであっても、その成功を左右する極めて重要な役割を担っています。たとえば、内部APIのドキュメントは、チーム間のコラボレーションを促進し、コードの重複を削減し、新しい従業員のオンボーディングを円滑にします。こうした利点により、すべてのチームがユーザーに優れたソフトウェアを届けるという共通の目標に向かって効率的に取り組むことができます。一方で、パブリックAPIのドキュメントは、潜在的な利用者がAPIを理解し、実際に試してみるための手助けとなります。これにより、APIの採用率が向上し、ひいては収益の増加につながります。実際、Postmanが発表した「2022 State of the API reprot」では、APIドキュメントは、リーダーが第三者のAPIと統合するかどうかを判断する際に重視する上位4項目の1つであると報告されています。


最も一般的なAPIドキュメントの種類は何ですか?

APIドキュメントにはさまざまな種類があり、それぞれが利用者にとってAPIを効果的に使いこなすための重要な役割を果たします。以下は、最も一般的で広く使用されている4つのドキュメントの種類です。

  • リファレンスドキュメント:リファレンスドキュメントでは、すべてのエンドポイントについて、そのメソッド、パラメーター、許容されるデータ型などを一覧形式で説明します。また、各エンドポイントがどのような目的で使用されるかについても、分かりやすい言葉で記載されます。
  • チュートリアル:APIドキュメントの中には、チュートリアル形式で構成されているものもあります。これらは、APIの使用方法について、ステップバイステップで手順を示すものです。チュートリアルは、APIが対応する特定のユースケースに焦点を当てて構成されていることが多く、利用開始に必要な認証などの基本的なワークフローについてもカバーされる場合があります。
  • 例とコードサンプル:例やコードサンプルを用いたドキュメントでは、一般的なAPIリクエストとレスポンスの例が提供されます。このようなドキュメントは、複数のプログラミング言語で記述されることが多く、利用者がAPIからどのような挙動が期待できるのかを理解しやすくします。
  • リリースノート:リリースノートには、APIに加えられた重要な変更に関する情報が含まれます。たとえば、新機能の追加、バグ修正、セキュリティパッチなどが該当します。こうした情報は、変更内容が利用者自身のコードベースに影響を及ぼす可能性があるため、非常に重要なリソースとなります。

APIドキュメントを作成する際に含めるべきものは何ですか?

すべてのAPIはユースケースや利用対象が異なるため、それぞれに最適化されたAPIドキュメントが求められます。しかしながら、高品質なAPIドキュメントを作成するうえで共通して参考になる、基本的な構成要素があります。以下は、その初期チェックリストとして活用できる代表的な項目です。

認証手順

認証は、APIのデータを安全かつ保護された状態に保つための重要な手段であり、開発者が新しいAPIを使用する際に最初に直面するハードルでもあります。もし認証のプロセスが複雑であったり、ドキュメントが不十分であったりすれば、開発者は混乱し、他のAPIを検討することになるかもしれません。そのため、APIドキュメントには、利用可能な認証方式についての明確な説明と、認証情報の取得および使用方法をステップバイステップで丁寧に解説する必要があります。

各エンドポイント・操作・リソースの詳細情報

APIドキュメントは、すべてのエンドポイントとその操作に関する包括的な情報を提供する必要があります。これには、パラメーター、ヘッダー、リクエストおよびレスポンスボディなどが含まれます。また、関連するデータモデルについても詳細に説明し、必須属性や既定値、最小値・最大値などの仕様を明記することが重要です。こうした情報は、利用者があらゆるユースケースに対応し、複雑なリクエストをエラーなく構築できるよう支援します。

一般的なリクエストとレスポンスの例

例は、APIドキュメントの中でも特に重要な要素です。リクエストやレスポンスの実例を提示することで、利用者はエンドポイントの挙動をさまざまな条件下で具体的にイメージしやすくなります。提供者は、複数のクライアント言語で書かれたリクエストの例や、それに対するレスポンスの例を提示することで、利用者が遭遇する可能性のある問題のトラブルシューティングを支援できます。また、こうした例は、特定のワークフローにおけるAPIの呼び出し手順を新しいユーザーに案内する際にも活用でき、APIがどのように高度なユースケースをサポートできるかを理解するうえで有益です。

利用規約

パブリックAPIのドキュメントには、「利用規約(Terms of Use)」を明記する必要があります。これは、APIのデータや機能が不適切に使用されないようにするための法的合意文書です。また、利用者が一定期間内に実行可能なAPIリクエスト数を定めた「レート制限」に関する情報も含めるべきです。レート制限は、サービス拒否(DoS)攻撃など、APIのパフォーマンスに悪影響を与える行為からシステムを保護するうえで重要な役割を果たします。利用者がこの制限を超過すると、一時的に追加のリクエストを実行できなくなり、最終的にはユーザー向けのダウンタイムが発生する可能性もあります。


APIドキュメントはどのように書きますか?

APIドキュメントの作成は、APIの機能に対する深い理解、利用者への共感、そして改善を重ねる意欲を必要とする、多段階のプロセスです。ドキュメントを効果的にするためには、以下の点に注意することが重要です。

  • APIを理解する:APIドキュメントの作成者は、APIの目的だけでなく、そのエンドポイント、メソッド、パラメーター、許容されるデータ型、そして認証方式についても十分に理解している必要があります。これにより、ドキュメントの正確性と網羅性を確保することができます。
  • 利用者を理解する:APIドキュメントは、技術レベルの異なる幅広い読者によって参照されます。そのため、ドキュメントの主な対象となる利用者層を明確にし、そのニーズや期待を理解することが、実用的で有益なドキュメントを作成する鍵となります。
  • 主要なユースケースに対する詳細な手順を提供する:APIのすべての機能を漏れなく文書化することは大切ですが、中でも最も一般的なユースケースには特に重点を置くべきです。これらのケースには、コードサンプルやリクエストの例などの具体的な補足情報を添えることで、利用者がスムーズに導入を進めることができます。
  • ドキュメントをレビュー・テスト・検証する:誰しもミスをする可能性があるため、ドキュメントを公開する前に徹底的な検証を行うことが重要です。このプロセスでは、すべてのユースケースとリクエストの流れを一通り確認するとともに、ドキュメント作成に直接関わっていない関係者による客観的なレビューを実施することが推奨されます。
  • ドキュメントを継続的に更新する:APIは頻繁に変更されるため、古い情報のままのドキュメントは利用者に混乱を与え、信頼を損ねる可能性があります。そのため、新しいコードをリリースするたびにドキュメントを体系的に見直し、必要に応じて速やかに更新することが不可欠です。

APIドキュメント作成におけるベストプラクティスとは何ですか?

APIドキュメントは、利用者にとって重要な成果物であり、その品質はAPI全体の成功に直結します。したがって、ドキュメント作成時には、次のようなベストプラクティスに従うことが非常に重要です。

APIの価値を物語として伝える

すべてのAPIは、提供者と利用者それぞれのソフトウェア環境において独自の役割を担っています。そして、その役割や背景を明確に伝えることがAPIドキュメントの責務です。ドキュメントの読者は、APIが誰のために設計されているのか、どのように活用できるのか、そしてその利用によってどのような目標を達成できるのかを理解できる必要があります。このような「大きな視点」は、技術的な実装の詳細を理解するうえでの重要な前提となり、開発者がAPIの可能性をより的確に把握する助けとなります。

ドキュメントを常に最新の状態に保つ

多くのAPI開発チームは、週に何度もコードを更新・リリースしています。その結果、ドキュメントの内容が古くなるリスクがあります。特に、更新が後方互換性のない変更である場合、古いドキュメントは利用者の信頼を失います。そのため、ドキュメントの更新プロセスをチームの開発ワークフローに組み込み、常に本番環境における最新のAPIの状態を反映するようにすることが不可欠です。あわせて、APIのリソースや機能に対するすべての変更内容を、日付付きの記録(チェンジログ)として残すことも重要です。

幅広い読者層を意識して書く

APIドキュメントは、エンジニアだけでなく、プロダクトマネージャー、ビジネス担当者、CTOなど、さまざまな専門職にとっての情報源になります。たとえば、開発者はAPIとの対話方法を把握するために、またCTOは料金体系やAPIの価値を理解して、ビジネス目標に適しているかを評価するためにドキュメントを活用します。そのため、ドキュメント作成者は多様な読者層を常に念頭に置き、専門的な技術用語に過度に依存せずに、APIの機能や目的を明確に伝える工夫が求められます。


APIドキュメントの事例はありますか?

PostmanのパブリックAPIネットワークは、世界中のAPI提供者が自らのAPIおよびAPIドキュメントを共有できる、グローバルで一元化されたAPIカタログです。利用者数4,000万人を超える開発者コミュニティを対象に、提供者は自身のAPIを公開し、ドキュメントとともに活用方法を広めることができます。パブリックAPIネットワークでAPIドキュメントを公開するチームは、詳細な説明やチュートリアル、リクエストおよびレスポンスの例、環境変数などを含めることができます。こうした情報の充実により、APIの採用率が高まり、サポートチケットの件数を減らすことが可能になります。実際に、パブリックAPIネットワーク上には、優れたAPIドキュメントを公開しているチームが多数存在します。たとえば、 StripeNotionPayPalAmplitudeSalesforceDoorDashなどがその一例です。ただし、これはほんの一部に過ぎません。さらに多くの事例をご覧になりたい方は、ぜひPostmanのパブリックAPIネットワークを探索してみてください。

なぜAPIドキュメンテーションにPostmanを使用するのですか?

Postman APIプラットフォームには、APIドキュメントをAPI開発ワークフローの中核に据えるための多くの機能が備わっています。Postmanを使用することで、チームは以下のような方法で、より効果的なドキュメントを作成・管理できます。

  • APIドキュメントを自動生成する:Postmanでは、OpenAPI 3.0の定義や作成したコレクションに基づいて、APIドキュメントを自動的に生成できます。APIドキュメントには、各パス、操作、データモデルに関する情報が含まれ、コレクションのドキュメントには、複数のクライアント言語でのサンプルコードや、リクエストのパラメーター、ヘッダー、ボディに対応するキーと値のペアが含まれます。
  • APIドキュメントを常に最新の状態に保つ:Postmanでは、定義やコレクションが更新されるたびに、対応するドキュメントも自動的に更新されます。これにより、提供者は常に最新のAPI情報を利用者に提供でき、ドキュメントと実装の間に不整合が生じるリスクを最小限に抑えられます。
  • コレクションドキュメントをより詳細に強化する: 提供者は、Postmanのビジュアルエディターまたは従来のMarkdownエディターを使用して、コレクションドキュメントに説明文、テキスト、表、画像などの情報を追加することができます。これらの追加情報は、各エンドポイントの目的や機能をより深く理解してもらうための重要なコンテキストを提供します。
  • 変数を使用してドキュメントを特定の環境に関連付ける:Postmanでは、特定の環境に対する変数値を作成・保存し、それらの環境をドキュメントとともに共有することができます。これにより、提供者はAPIドキュメントと一緒にテスト環境を提供でき、利用者は認証プロセスを完全に経ることなく、コストをかけずにAPIの動作を試すことが可能になります。
  • 他のパブリックAPI関連リソースと一緒にドキュメントを公開する:提供者は、Postman APIネットワーク上で、自身のワークスペースやコレクションと一緒にAPIドキュメントを公開できます。これにより、利用者は対象のAPIをより簡単に発見・探索し、すぐに利用を開始できるようになります。また、ドキュメントはパブリックドメインに公開することもでき、幅広い開発者にアクセスしてもらうことが可能になります。

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APIアイコンのまわりで踊るPostmanautたち。イラスト。
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